リトルリーガーズショルダー ~主に少年野球から中学生まで~
疾患に関するQ & A
・リトルリーガーズショルダーとは何ですか?・リトルリーガーズショルダーはどれくらいの人が、かかる病気なのでしょうか?
・リトルリーガーズショルダーの原因は何ですか?
・リトルリーガーズショルダーはどんな症状がでますか?
・リトルリーガーズショルダーはどうやって診断するのですか?
治療、手術に関するQ & A
・リトルリーガーズショルダーの治療はどのようなものがありますか?・リトルリーガーズショルダーは手術をしないでも治りますか?
・リトルリーガーズショルダーの治療をせずに放置した場合、どうなりますか?
リトルリーガーズショルダーとは何ですか?
成長過程にある少年、中学生前後では腕の骨の付け根に骨が伸びるための成長線が残っています。リトルリーガーズショルダーは、繰り返しの投球による牽引と回旋の力がかかることで、成長線を損傷することをいいます。青年以降の投球障害とは根本的に異なる障害であるため、注意が必要です。投球動作は止まっている腕を急激に加速させるため、例え少年であっても肩には大きな負担がかかります。J Pediatr Orthop. 2010;30(1):1.
少年野球やリトルリーグのプレーのレベルは年々上がり、小学生でも120-130キロを超えるような球を投げるピッチャーがいることからも、骨にかかる負担は増していると言えるでしょう。
リトルリーガーズショルダーはどれくらいの人が、かかる病気なのでしょうか?
リトルリーガーズショルダーは通常11歳から16歳のピッチャーにみられ、13歳頃にピークがあります。少年~中学生の野球選手が経験する肩の痛みとしては、ありふれたものといえます。青年以降に発生する投球障害は関節唇や腱板など関節内に明らかな損傷を伴うことがありますが、少年、中学生の投球強度ではそれらに損傷を起こすことはごくまれです。少年、中学生が肩の痛みを訴えた場合、高い確率でリトルリーガーズショルダーが原因であると考えることができます。
リトルリーガーズショルダーの原因は何ですか?
リトルリーガーズショルダーの原因は、投球による負担がかかり成長途中の骨が損傷されてしまうことです。言い方を変えれば「体の成長が野球についていけていない」と捉えることもできます。骨の成長には個人差があるため、一様に投球数を設定することなどが原因の一端となる可能性があります。リトルリーガーズショルダーはどんな症状がでますか?
リトルリーガーズショルダーは、投球時の肩付近の痛みで発症します。痛みは投げるたびに徐々に強くなり、じっとしていても痛みを感じることがあります。肩全体の痛みを訴えることが多いのですが、診察すると腕の付け根の外側に押すと痛い場所があります。リトルリーガーズショルダーによる肩の痛みは、野球のプレーによって発症します。ある一球を投げた瞬間にズキッと痛みがでることもあれば、練習が終わった後、練習があった日の夜から痛くなるなど、痛みがでるタイミングはまちまちです。痛みのために投球は困難となり、症状が悪化すると日常生活の動きでも痛みを感じるようになります。
リトルリーガーズショルダーはどうやって診断するのですか?
リトルリーガーズショルダーの診断には、患者さんの年齢や投球動作を行う頻度や強度、発症のタイミングなど問診が重要なヒントとなります。腕の付け根の外側に圧痛があり、レントゲン写真で骨端線(成長線)の拡大があればリトルリーガーズショルダーと診断されます。リトルリーガーズショルダーは成長過程にある子どもの肩に、過度の負担がかかることで発症する病気です。患者さんの年齢や体格に見合った投球量なのかどうか、確認する必要があります。
画像検査では、レントゲン写真で骨端線(成長線)の拡大を確認できることがあります。正常でも隙間が見える場合があるため、左右を比較することで診断の確率を高めることができます。
ただしレントゲンでは撮影の角度により見え方に差がでるため、より厳密な診断のためMRI検査を行う場合があります。MRIは被爆がなく害のない検査であるため、15-20分程度じっとしていられる年齢であれば、実施可能です。
超音波検査では肩の周りの腫れを検知できる可能性があります。診断の参考とすることがあります。
リトルリーガーズショルダーの治療はどのようなものがありますか?
リトルリーガーズショルダーは、安静にすることで自然に治癒する疾患です。安静期間には肩以外、体幹や下半身の柔軟性向上、筋力強化を図り再受傷を予防していきます。疼痛が改善すれば投球を再開し、徐々に段階を上げていきます。リトルリーガーズショルダーは骨を損傷する疾患ですが、回復力の強い場所の損傷であるため、安静にすることで自然に治癒します。安静期間は病状により異なりますが、少なくとも4-6週程度の投球禁止が必要となります。安静期間中は肩に負担のかかる動き、例えば鉄棒にぶら下がる、重いものを持つなどの動きも制限する必要があります。バッティングは許可できる場合もありますが、痛みが強い場合には禁止します。
しっかりと安静にすることができない、治癒する前に投球を再開してしまうなどの要因があると、治療期間がさらに長くなってしまうため、両親や周囲のサポートが必要な疾患です。
肩以外の部位のコンディショニング不良があると、リトルリーガーズショルダーを発症する原因となるため、安静期間中に体幹や下半身のコンディショニングを行います。これまでの練習量や投球量の見直しを同時に行うことができると良いでしょう。
日常生活での痛み、腕の付け根を押した時の痛み、腕を振った時(軽いシャドーピッチング)の痛みが軽減してきたら徐々に投球を再開します。再び痛みが強くならないかどうか、慎重に経過を追う必要があります。