子宮腺筋症外来このページを印刷する - 子宮腺筋症外来

当月と翌月のご予約を受付ております。

子宮腺筋症外来予約について

当外来受診をご希望の方は下記をご確認の上、該当の連絡先までお電話ください。
尚、ご不明な点につきましては、電話/メールにて地域医療連携室までお問合せ下さい。

●  子宮腺筋症の診断が確定していて、保存的手術療法(子宮腺筋症核出術)を
  希望される方は、子宮腺筋症専門外来をご予約下さい。

  予約電話番号 : 029-826-6187
  予約受付時間 : 毎月 1 日以降の平日午後4時から午後5時まで
  予約対象期間 : 翌月外来分
  ※翌月予約枠がすべて埋まった時点で予約締切となります。
  腺筋症外来受診時にMRI検査を受けられる方へ

●  月経痛や過多月経といった症状から子宮腺筋症であることが疑われているが、
  確定診断されていない方、あるいは、子宮腺筋症と診断されていて挙児希望が
  なく、子宮全摘術を希望されている方は、毎週金曜日の西田医師
  の初診外来を受診して下さい。金曜日の西田医師外来には紹介状が必要です。
  ご予約希望の方は地域医療連携室までご連絡ください。

  問合せ先電話番号  :  029-826-7556
  予約・問合せ受付時間 : 平日午前8:30~午後5:15

● 現在受けている子宮腺筋症に関する診断や治療面での質問や疑問に関する
  ご相談は、セカンドオピニオン外来を受診して下さい。
  *セカンドオピニオン外来は完全予約制で必ず紹介状が必要になります。

  予約受付電話番号 : 029-826-7556
  予約受付時間   : 平日午後2時~午後4時
  ※セカンドオピニオン診察料は、保険外診療となります。

子宮腺筋症に関する問い合わせと保存的手術の依頼が多いことから、平成17年5月から子宮腺筋症の専門外来を開設しました。また平成17年10月、当院から申請された「高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術」が厚生労働省の定める「先進医療の初の対象として採択され、当院での実施が認可されましたが、令和5年3月31日で先進医療から一旦外れることになりました。
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1.子宮腺筋症とは

子宮の内面を覆っている子宮内膜という組織は卵巣から分泌される女性ホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)の作用を受けて、増殖、剥脱を繰り返しています。この剥がれたときが月経です。子宮の内面にだけこの子宮内膜があれば何の問題もありませんが、この子宮内膜が別の場所にできることがあります。最も多いのは卵巣で、卵巣の中に子宮内膜組織ができると、この部位で月経と同じ現象がおこり、血液はそこに貯まっていくことになります。古い血液が徐々に貯まるために卵巣は腫れ、周囲の子宮、腹膜、直腸などと癒着し、月経痛の原因となります。この様な病気を子宮内膜症(以下内膜症と略)といいます。この時に貯まった古い血液はチョコレート色をしているのでこの卵巣の腫れはチョコレート嚢胞と呼ばれます。
内膜症の原因はよく判っていませんが、月経血が卵管を通じて腹腔内に逆流し、その中に含まれていた子宮内膜が卵巣にくっついて増殖するという説と、卵巣の組織の一部が何らかの影響で子宮内膜に変わってしまうという説があります。この様に子宮の内面以外の場所にできた子宮内膜を異所性の子宮内膜と呼びますが、実はこの異所性の子宮内膜が子宮の筋肉の中にできることもあります。これが子宮腺筋症(以下腺筋症と略)です。 以前は子宮以外にできる子宮内膜症を外性子宮内膜症、子宮にできる子宮内膜症を内性子宮内膜症と呼んでいました。しかし、この2つの疾患はでき方が全く違い、また治療法や薬物に対する反応も異なるため、同一の疾患名は適当でないとされ、内性子宮内膜症は子宮腺筋症と病名が変わりました。従って、子宮腺筋症という病名は歴史が浅いので一般には馴染みがありませんが、病気そのものは昔からある病気で、決して珍しい病気ではありません。通常、子宮は全体的に大きくなり、月経量も増えます。
腺筋症の発生の仕方は、内膜症と同じメカニズムで発生する2型と、内膜症とは違って、正常の子宮内膜が何らかの原因で子宮の筋肉の中に深く潜り込んで発生する1型のあることが最近わかってきました。
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2.子宮腺筋症の症状

腺筋症による痛みは激烈で、例えば痛みを十段階に分けて、0は痛みの無い状態、10はこれ以上の痛みは想像できないほど強い痛みとして患者さんに「あなたの月経痛の強さはどの程度になりますか」と訊くと、ほとんどの方が「10」と答えます。また、月経痛は2型では十代からあることが多く、1型では三十歳を過ぎた頃、例えば「子供を産んで2年経った夏の月経から痛みが始まった」というように、突然発症するのが特徴です。
腺筋症が重症になると、痛みは下腹痛だけではなく足に放散したり肛門痛として感じるようになることもあります。また過多月経も1回の月経で強い貧血を来すほど強くなることもあります。一方、腺筋症は妊孕性(妊娠する能力)にとって非常に不利に働き、妊娠しにくく、また妊娠しても流産しやすいという特徴があります。女性ホルモンの刺激で病状は進行するため、治療しなければ閉経まで増大し続け、症状は悪化します。

3.子宮腺筋症の分類

子宮腺筋症には幾つかの分類があります。一般的には腺筋症はび慢性の形(周囲組織に入り込んで行き、境界が不明瞭な状態)をとりますが、結節性といって子宮筋腫のように一部に腺筋症の塊を作る場合もあります。また、この結節の中央部に丁度卵巣にできるチョコレート嚢胞のように古い血液を貯留することもあります。このようなタイプを嚢胞性腺筋症と呼んでいます。び慢性腺筋症に比べ結節性腺筋症は病巣が小さいので診断が難しく、見逃されることがあります。しかし、月経痛などの症状はび慢性腺筋症と同じく強いため、強い月経痛を訴えて産婦人科の診察を受けても異常ないと言われることもあり、医師にとっては注意を要する病態です。
子宮腺筋症の局在による分類もあります。子宮の前壁や後壁など、子宮の一部分にできるのは部分性、それに対し子宮全体が腺筋症で置き換えられてしまっているようなものは全周性と呼ばれています。これらは単に分類として意味があるだけではなく、当院での腺筋症核出術に際しては、分類に対応させて術式を選択しているので、治療法との関連からも腺筋症の分類は重要となります。

4.子宮腺筋症の治療法

腺筋症の治療法には手術による治療法(手術療法)と薬による治療法(薬物療法)が考えられます。薬物療法は月経痛に対する鎮痛剤の服用以外ではホルモン療法が主となります。子宮内膜症の場合にはホルモン療法の効果は期待できますが、腺筋症の場合にはダナゾール療法が比較的小さい腺筋症に対して有効である以外はことごとく無効です。従って、リュープリンやスプレキュアといった血中の女性ホルモンを低下させる治療法は、投与中には無月経となるため月経痛は中断しますが、治療が終了すれば月経痛も再開します。またピルやジェノゲストも治療薬として使用されることがありますが、腺筋症を治癒させることはありません。 現在尚、子宮腺筋症に対する標準的手術療法はあくまでも子宮の摘出術とされています。元々腺筋症は経産婦に多く発生する疾患ですから、発症時には既に生児を得ていることが多く、生命維持器官でない子宮の摘出術は受け容れられやすかったのです。しかしながら腺筋症は全く妊娠の既往が無い女性にも発生することがあり、更に我が国における女性の晩婚化と腺筋症そのものの増加によって、妊孕性(にんようせい:妊娠できる能力)の温存を希望する女性の腺筋症治療は無視できないものになっています。この様な社会的背景と、前述のように薬物療法がほとんど無効なため、当院では2002年から腺筋症核出術(子宮を残して病巣部分だけ切除する術式)を研究・開発してきました。

5.子宮腺筋症核出術

ある病変を核出するという術式は、核出すべき病巣が正常組織と明瞭に識別され、しかも機械的に分離可能な場合に成立するのですが、腺筋症の場合にはこの両方の条件が当てはまりません。即ち、
 
  1. 腺筋症は肉眼的に正常子宮筋との区別がつけ難く、手術時にその局在がはっきり識別できない。
  2. 腺筋症組織は正常子宮筋の中に複雑に入り込んでおり、境界が不明瞭で、正常の子宮筋と機械的に分離できないからです。
この様に腺筋症の核出術は子宮筋腫の核出術のように、目で見て、メスとハサミを用いて核出するという従来の概念をそのまま当てはめることができず、術式そのものに病巣の識別から切除機器まで新たな概念の導入が必要でした。

以下に、この2点に関する当院での術式を紹介します。

腺筋症の識別
核出に際してまず大切なのは腺筋症部分の正確な把握です。腺筋症の診断は患者の主訴と理学的所見、それに経腟超音波像、CA125値などからなされ、その主たる局在はMRI像で知ることができます。しかし、手術操作にあたって正常筋層と腺筋症部分の境界を肉眼的に正確に識別することは困難です。我々は腺筋症の硬さに注目しました。腺筋症組織は正常子宮筋に比べて硬いので、触診によって腺筋症の局在を知ることができます。特に、術中に核出範囲を決める場合には、触診で硬い部分があれば腺筋症が残存し、なければ正常筋層であるとほぼ正確に判断できることが判りました。また、手術経験を重ねるに従い、高周波切除器による切除面の色調によっても腺筋症か正常の子宮筋かの区別ができるようになりました。この様に触診と経験に基づいた視診とによって、腺筋症部分の識別とその局在を正確に知るという問題は解決しました。

腺筋症を核出するための器具
次はその複雑な分布に臨機応変に対応できる切除器具の開発です。
当初、腺筋症を一塊にして筋腫のように核出していましたが、基本的にはこの様な操作では正確に腺筋症と正常筋層の境界部に分け入ることはできません。そこで、我々はオネストメディカル社製高周波切除器(下平式高周波手術器MGI-202)に接続して使用する、新たに試作されたリング導子(特殊導子先タイプT)を用いました。リング導子の利点は、切除と凝固が同時に行えること、また、その大きさを変えることによって、大きくも、小さくもどのような形状にも対応して切除操作が可能な点です。この機器を利用することによって、腺筋症と正常筋層の境界部を指で探りながら腺筋症部分を繊細に核出できるようになりました。

6.術式の種類

当院では現在3種類の術式を腺筋症の種類によって使い分けています。
結節性腺筋症と嚢胞性腺筋症に対しては、病巣部分を中心に周囲の腺筋症を切除し、欠損した子宮筋を縫合閉鎖する方法(これを我々は古典的術式と呼んでいます)を行います。
び慢性で部分性の腺筋症に対しては、腺筋症病巣を確実に切除した後、子宮形成術によって子宮を正常の形に近づけるように作り直す方法(これを我々はType I術式と呼んでいます)を行います。
全周性の腺筋症の場合には、全ての病巣を切除することは不可能ですので、子宮を非対称性に縦断し、その切断面から両側の腺筋症病巣を切除した後、再び子宮を縫合して単一化する方法(これを我々はType II術式と呼んでいます)を行います。

7.腺筋症核出術の実績

当院で実施された腺筋症核出術は2,276例で、部分性1,693例、全周性583例です。うち先進医療として実施されたのは2,158例でした(令和6年3月31日現在)。症例の年齢は14歳から53歳に分布して平均38.0歳、手術時間は43分から651分に分布して平均153分、出血量は1gから8,921gに分布して平均476g、腺筋症の切除重量は1.0gから1,595gに分布して平均145.1gでした。60例(2.6%)に輸血をしています。重大な合併症はありませんでした。その月経痛の改善度を、月経痛の強さを0から10の段階で表して比較すると、術後に月経が再来し術前・後の比較が可能な2,136例では、術前の平均月経痛9.1が術後には平均2.2と改善されました。また、全例で過多月経も改善されました。術後の妊娠例は508例で、333人の方がすでに生児を得ています。再発率は術後2年以上経過した2,167例中228例(10.5%)でした。
腺筋症の核出術は、妊孕性温存を希望する若年女性を対象とした発展途上にある手術です。今後も術後の症状の改善度、妊娠率、或いは再発率等に関する長期的予後を見ながら術式を改良してゆきたいと考えています。
子宮腺筋症はご自分で診断できる病気ではなく、月経痛や過多月経という症状から専門の産婦人科医によって診断される疾患です。従って、診断医の紹介状を必ずお持ち下さい。確定診断ではなく、子宮腺筋症の疑いがあるという紹介状でも勿論構いません。

お問い合わせ先

地域医療連携室:029-826-7556 (平日14:00~16:00)
メール:201-tiikiiryou@mail.hosp.go.jp
※メールでのお問合わせは、数日かかることもございます。