研修医日記
霞ヶ浦医療センターでの初期研修
研修医とはいえ一人の医師として臨床上の判断を下すためには自ずと各種の診察を自分で行い、必要な検査や処方をオーダーし、その結果をもとに次の一手を考えることになりますが、迷うことや判断しかねることがあれば、どの先生方も別け隔てなく丁寧に教えて下さいます。患者さんやご家族とのコミュニケーションの取り方が特に素晴らしい先生もいて、そのスタイルからも学びつつ、自分なりの患者さんやご家族の状況や個性に合わせたコミュニケーションの取り方を毎度模索しています。また、病棟では毎日、看護師、理学療法士、言語聴覚士、臨床工学技師、薬剤師、管理栄養士、作業療法士、診療放射線技師、臨床検査技師、そして医療ソーシャルワーカー等の皆さんとやり取りしながら、医師という立場に求められることは何か、自分が責任を持つべき専門性とは何か、多職種が上手に嚙み合っていくために医師はどうあるべきか、個別の事例を通して少しずつ具体的に学んでいるように思います。先を読んだオーダーや指示を的確に出せるようになりたいと思うのですが、そういう点でも周囲のドクターだけでなく経験豊かな多職種の皆さんからも学ぶことがとても多いです。

当センターの歴史は古く、地域の方々から頼りにされてきた病院です。患者さんの多くがご高齢で、自宅や施設から救急搬送されて入院となるケースも多いです。研修医は希望すればそのファーストタッチから身体診察、各種の検査、患者さんや付添者からの情報収集やIC取得などの経験を積むことができます。複数の疾患・病態を抱える患者さんが多く、common diseaseとはいえ実際の状況はさまざまであり、入院というイベント自体にもさらなるADL低下のリスクが伴うなか、病態の連鎖を止められず、急性期を乗り越えてもらうことの難しさを実感することもあります。また、なんとか急性期を乗り越えてもこんどは転退院先の調整が困難となる事例も多く、地域医療の体制や家庭の問題を直に感じるケースも多いです。

ところで、研修医の居室は建物の最上階にあり、病院自体が丘の上にあるということもあって、眺めがとても良いです。車の行き交う高速道路の向こうに宝篋山(ほうきょうさん)と筑波山が重なり、朝焼けや夕焼けのときは特にきれいです。霞ヶ浦の湖面も少しだけ見えます。居室は研修医と若手医師だけの部屋なので、みんなすっかりリラックスして過ごしています。温かい飲み物はいつでも好きなものを飲めるようになっていて、医局事務の方が定期的にメンテナンスしてくださいます。当センター基幹型として採用の初期研修医の同期は、自分を含めて2名だけですが、筑波メディカルセンター病院や筑波大学附属病院、水戸医療センター等の研修医が常に数名、当センターの婦人科や麻酔科の研修のために数カ月交代でいらっしゃっているので、実際には意外と多くの同期との出会いがあります。また、当センターでは研修が難しい小児科、外科系、三次救急等は、こちらから上記機関に数カ月間出向いて研修させていただくことになります。また、当センターの敷地は広大で、タヌキやウサギの目撃情報もあります。先日は、病棟のカルテ端末からふと目を上げると窓の外の網戸を大きなカブトムシが歩いていました。周囲のスタッフに伝えようかと思いましたがちょっとそんな状況ではなさそうなので黙っていましたが、その後院長が入ってきて「あのカブトムシ採った?」と聞かれ、採ればよかったかと後悔しました。

臨床研修施設としての当センターは、研修医がそれぞれのペースでじっくり学べる環境です。たくさんの同期とともに切磋琢磨しあったり屋根瓦式に教え教えられる環境がはじめから整っているわけではありませんが、それも自分しだいであり、他院での研修も含めれば2年間でかなり多様な現場を経験できるようになっていると思います。自分の時間をしっかり持てるので、日々の出来事を振り返って整理・復習する時間があるし、身につけたい手技を重点的に練習させてもらったり、筑波大学の図書館ネットワークと接続した院内の図書室も利用しつつ専門的な勉強を自分で進めたりすることもできます。私の場合は、1年目の途中に担当させていただいた症例をもとに、筑波大学病院の先生にもご指導いただきながら英文誌と欧州の学会にcase reportを投稿する経験をさせていただきました。アカデミアとのネットワークが普段からアクティブな病院なので、初期研修医時代から医学分野のpublication skillを磨いていきたいというような人には、実は最適な研修環境かもしれませんし、そうでなくても何か自分の目指す方向があって、そのためにこの環境を利用しようと自分から動いていける人には、とてもマッチする研修環境だと思います。